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研究内容

トキソプラズマ症の新しい検査法の応用と開発

 トキソプラズマ症を迅速に的確に検査・診断できる体制を確立し、また、予防措置を講じたいと考えています。項目は次の通りです。(1)Sabin-Feldmanのdye test(色素試験)の実施、(2)外国で近年開発された検査法の有用性と限界の評価、(3)dye testの平易化、(4)新しい検査法の開発、(5)我が国でのヒトおよび家畜での感染実態の解明。  トキソプラズマ症は重要な人畜共通感染症です。我が国のヒトでの感染率(抗トキソプラズマ抗体陽性率)は、現在でもなお「年齢×(0.1~1) %」程度もあると推測されています。多くは不顕性感染のまま慢性感染へと移行しますが、重篤な先天性感染(先天性トキソプラズマ症)や脳炎(例:エイズ・トキソプラズマ脳炎)、リンパ節炎、眼症等を起こすことがあります。
1948年に開発されたdye testは今なおトキソプラズマ症の最も信頼できる検査法とされています。しかしながら、マウスへの腹腔内投与によって継代した生きた虫体(tachyzoite)を用いること、手技の安定には熟練を要すること等から、限られた専門機関でのみ実施可能です。近年、我が国では唯一、慈恵医大熱帯医学講座で行われてきましたが、専門家の退任に伴い、2011年3月をもって行われなくなってしまいました。そのため、診断に苦慮するという状況がおきてきています。一般に検査として行われているラッテクス凝集反応では、「抗体の陽性・陰性」から感染の有無を言えても、病期・病勢を語ることは難しいことに起因しています。一方、近年、外国で新しい検査法がいくつか開発されましたが、我が国では、IgG abidity testが一部の医療機関で行われているのみで、他はほとんど行われていません。これらの状況から、従来法のdye testによる診断体制の再構築と、蛍光標識を用いた迅速簡便dye test法の開発を目指します。
(写真:大腸アメーバシスト。便の塗抹のトリクローム染色(変法))