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研究内容

遺伝子改変による高効率化マゴットセラピー法の開発

マゴットセラピー(Maggot Debridement Therapy: MDT)とは、ヒロズキンバエの幼虫(マゴット)が患者の壊死組織だけを摂取する性質を利用し、糖尿病性足壊疽をはじめとした人体の難治性創傷を治療する方法です。本研究は治療効果の高いマゴットの作出によるMDTの改良を目的としています。
 MDTは、壊死組織の除去、抗菌、および肉芽組織増生の促進をマゴットが同時に、行うことで、難治性創傷の治療に効果を上げます。主に糖尿病性足壊疽において、他の治療と併用して用いられ、切断を迫られた糖尿病性足壊疽を救済する例も多いことが知られています。治癒能力の高いマゴット株の作出のため、トランスジェニック法やCRISPR/Cas9法などの遺伝子改変技術を用いて研究を進めています。(1)蛹化に必要なステロイド代謝経路を一部阻害することで、幼虫の期間を延長し、壊死組織除去量の増加を狙います。(2)マゴットが本来有する抗菌能力に加え、耐性緑膿菌やバイオフィルム形成菌等への抗菌効果を付与することを目指しています。(3)ヒト線維芽細胞増殖因子の遺伝子を導入することにより、肉芽組織増生促進効果の強化を行います。
 近年、糖尿病患者数は世界中で増加の一途をたどっており、20年後には5億人に増加すると予想されています。その中でも糖尿病足壊疽は、治療に時間とコストがかかり、切断に至った場合の予後が悪いことで知られています。MDTは他の治療に比べコストが安いことも魅力の一つです。治癒能力の高いマゴットの開発により、増加の一途をたどる糖尿病性足壊疽において、四肢切断を回避し、患者のQOLの向上につながることが期待されます。