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研究内容

芽殖孤虫の生態の解明と芽殖孤虫症の治療法の探求

芽殖孤虫症は、芽殖孤虫(Sparganum proliferum)の寄生によって引き起こされる幼虫移行症です。芽殖孤虫症が他の幼虫移行症と決定的に異なる点は、人体内で芽殖孤虫が無性的に増殖を行う事です。人体内で無制限に個体数を増加させた芽殖孤虫は、様々な臓器・組織に移行し、それらを破壊し、臓器不全や二次感染を引き起こします。広範囲に播種した芽殖孤虫を手術で摘出するのは困難であり、有効な化学療法薬も見つかっていないため、芽殖孤虫症は極めて予後不良な疾患です。
 芽殖孤虫症は世界でも十数例しか報告されていないため、その詳細はほとんど解っていません。遺伝子解析の結果、マンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei)と近縁であることは明らかにされていますが、マンソン裂頭条虫は幼虫移行症の原因となることはあっても、人体内で増殖することはありません。芽殖孤虫は有性生殖を行いませんが、終宿主は見つかっておらず、その生活環は謎に包まれています。そのため、どの様な行為が芽殖孤虫症のリスクとなるのかもわかっておらず、確実な予防法も不明です。芽殖孤虫症は極めて珍しい疾患ですが、そのうち半数近くは日本からの報告です。地域については、関東や九州など、比較的広い範囲で見つかっており、日本国内では芽殖孤虫は広く分布している可能性があります。芽殖孤虫の感染リスクは解っていないものの、近年の登山やジビエ食などの流行は寄生虫感染症のリスクを高める要因となり、日本で新たな芽殖孤虫症が発生する可能性は高まっているかもしれません。
 我々の研究グループでは、芽殖孤虫のその極めて特徴的な生態の解明と、芽殖孤虫症に対する有効な治療法の開発を目標に、研究を行っております。我々は、過去にベネズエラで発生した芽殖孤虫症の患者から採取された芽殖孤虫を継代・維持しています。この芽殖孤虫を用いて、芽殖孤虫の特異的な生態についての研究と、芽殖孤虫症に対する有効な治療法の開発を進めています。