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研究内容

自己免疫性疾患に対する寄生虫卵内服療法の開発

我が国では乾癬や炎症性腸疾患などの自己免疫性疾患が増加の一途にあります。発展途上国でよくみられる寄生虫疾患と、先進国で多い自己免疫性疾患の発生率は逆相関関係にあり、寄生虫感染との関係が指摘されています。衛生管理の不十分な地域の人々は、衛生管理が実施されている地域に比べ、幼少期より(厳密には胎児の段階から)高い頻度で腸管感染性蠕虫の暴露を受けています。多くの先進国の人々は、この「古い友人」を欠いた環境で生まれ育つため、免疫システムの成熟に支障を来し、アレルギー性疾患や自己免疫疾患を発症しやすくなるという仮説が提唱されています。この仮説は「Hygiene Hypothesis(衛生仮説)」と呼ばれ、1989年にStrachanがイギリスとニュージーランドにおける花粉症と喘息患者の増加の理由として考案しました。その後の複数の観察研究から、寄生虫感染症とアレルギー性疾患・自己免疫疾患の罹患率は逆相関することが示され、衛生仮説を支持するエビデンスが蓄積しました。動物モデルでは、寄生虫感染と自己免疫疾患との関係におけるメカニズムが研究されており、Th1/Th2パラダイムの関与が明らかになっていますTh1/Th2パラダイムとは、体内の免疫のバランス、大まかにTh1=液性免疫(炎症性疾患)とTh2=細胞性免疫(寄生虫、アレルギー疾患)のバランスを指しています。
 2003年に米国のSummersらは、人為的な寄生虫感染によりTh1細胞の抑制を誘導することで、自己免疫性腸炎である炎症性超疾患をコントロールできるとの仮説を立てました。私達は、人体への影響が最小限で、一定期間の後に自然に排除される寄生虫(豚鞭虫)を用いた虫卵内服療法に取り組んでいます。安価で効果の高い、自己免疫疾患の治療法開発を目指しています。